小児の咬合育成・矯正治療
小さな子供は生まれてすぐ何でもできるわけではありません。 「噛む・飲み込む・食べる・話す・・・」などの口の機能も例外ではありません。 成長期に起こった小さなトラブルを放っておくと、 大人になった時に重篤な機能不全、不正咬合になったりしますが、 適切な時期に適切な治療を受け、早期に回復すればそうなるのを未然に防ぐことができます。 歯ならびや咬み合わせには姿勢、呼吸、また舌、唇、頬などの筋肉の機能が大きく影響します。
むし歯の治療から歯みがき指導に定期的な健診やフッ素塗布などの予防処置、 そして機能回復トレーニングや咬合治療、また食べ方指導や精神ケアまで、 一人一人の患者さんや親御さんにきめ細やかな治療と指導を行っています。 これまで多くの子供たちと出会い、成長のお手伝いをし、見守ってきました。 きれいな歯、正常な口の機能で一生おいしく食べられるお手伝いが出来たら幸いです。

適正な時期に適正な治療を
ここで重要なのが、症状が「悪化してから治す」のではなく、「悪化する前に整える」という考え方です。成長期には、骨格をコントロールできるタイミングがあります。しかし、成長が終了すると、その選択肢は大きく減少します。顎の幅を拡大することも、上下顎の前後的な関係を修正することも、外科的介入なしでは困難になる場合があります。つまり、小児矯正とは「時間を味方につける医療」です。その時期を逃さないことこそが、将来の負担を軽減する最大の鍵になります。

井上裕子著「子どもの不正咬合」(クインテッセンス刊)参照、改変
●波線部分:治療せずに経過した場合、成長とともに症状が進行していく状態を表しています。顎の発育バランスが崩れ、歯並びのズレが拡大し、治療の難易度が上がっていきます。
●実線部分:適切なタイミングで治療を行うことで、正常な発育方向へ回復していく様子を示しています。成長力を利用することで、比較的シンプルな治療で改善できる可能性があります。
小児矯正は、「今は軽いから大丈夫」という判断ではなく、「このまま成長するとどうなるか」という予測が重要です。
第1期治療(成長を利用する矯正)
第1期治療は、顎の幅を広げたり、顎の左右や前後的なズレを修正したりすることで、歯が自然に並ぶ土台を整えます。この時期の治療は、「歯を動かす」よりも「顎を整える」ことが中心です。成長期であるからこそ可能な治療であり、大人になってからでは同じ効果は期待できません。適切に第1期治療を行うことで、将来的な抜歯の可能性を減らせたり、第2期治療を簡略化できたりする場合があります。
乳歯のころ
乳歯のころは、不正咬合の「芽」を早期に発見し、生活習慣・習癖の改善や呼吸や舌機能の正常化を主眼とした口腔機能の改善アプローチをとります。「治す」というよりも、「育てる」「整えていく」という段階です。尚、交叉咬合などなるべく早期に治した方がよい場合もあります。
前歯の生え変わるころ
前歯の生え変わるころは、小さな乳歯列から永久歯列に移行するために 上顎の横幅が大きく成長する時期であり、個人差がありますが10歳ぐらいまでは「上顎の拡大」が期待できる時期です。主にクワドヘリックスという装置を使用するなどして、歯列弓を拡大、整えていき、永久歯の並ぶためのスペースを作っていきます。また改善して広くなった上顎に、しっかり舌をつけ、口を閉じ鼻呼吸できるように指導していきます

背の伸びるころ
背の伸びるころ(思春期成長スパート期)では、身長が急激に伸び下顎の前後的成長が活発な時期となります。骨格改善のゴールデンタイムであり、成長を利用できる最後の重要期といえます。つまり骨格性不正咬合のコントロール可能な最終チャンスです。機能的矯正装置や、成長誘導型装置を使用して、「上下顎の前後的バランス調整」を行っていきます。
第2期治療(歯並びとかみ合わせを整える矯正)
成長がほぼ止まり、永久歯が生えそろい必要なら歯並びと細かいかみ合わせの治療をします。1期治療をすることにより簡単に終えることができる方がほとんどです。
この時期に矯正を始める場合(一般に言う矯正治療)では、骨格成長がほぼ終了しており、顎の成長誘導はできません。そのため、「抜歯の必要性が高くなる」「治療期間が長くなる可能性がでてくる」「骨格的問題は外科併用になることもある」など、一定の制約が出てきます。
“今しかできない治療” とは
小児矯正には、「その時だからこそ可能な治療」があります。顎の成長誘導、骨格の改善、筋機能の正常化――これらは成長終了後には同じ方法では行えません。今は軽度に見える問題でも、成長とともに悪化することがあります。逆に、今だからこそ簡単な装置で改善できるケースもあります。“待つ”という選択も治療の一つですが、“逃してはいけない時期”も存在します。当院ではその境界線を見極めます。
